くまもと食財レシピ
「私たちが作っています」生産者の声
  • 困難を乗り越えられた原動力は惚れた大長なすの生命力
  • 大長なす生産者
  • 熊本市北区植木町清水
  • 井村正裕さん
  •  「ただ焼くだけばってん、たいぎゃ旨かったですもん!」。自身が高校生の時に初めて口にした大長なすの味を語る時、日に焼けた井村さんは満面に笑みを浮かべた。約30年前に父親が生産を開始した大長なす。現在では75アールの畑で年間約10トン以上を出荷している。
大長なす生産者 井村さん
大長なす

 井村さんが本格的に生産を始めた年のことだ。多用で忙しく、さらにうっかりも重なってビニールハウスの換気を怠り、栽培していたなすを焼いてしまったことがあった。その為しばらくの間収穫ができなくなったが、父親のアドバイスもあり、半信半疑で一旦切り戻してみたという。「その後、枝葉が出て花芽がついて、良か花が咲いたっですよ。『お前ら、すげ~!』って感動してから、その力を信じるようになりました」。紆余曲折ありながらも、大長なすの逞しい生命力と共に生産技術を高めていった井村さん。毎年3月から11月までの約8ヶ月間、苗の植え付けや花付け、そして収穫と毎日が生産工程の積み重ねだが、苦労を聞くと「なんでんきつかばってん、なんでん楽しかったいね」と目を細める。
 そんな井村さん一押しのレシピは、スライスした大長なすに塩コショウをふってケチャップを塗り、ホットプレートで蒸し焼きにした"なすピザ"。「最後に乗せたチーズがとろけたら食べ時よ!」と話す井村さんの力強さが、その美味しさを物語っている。

  • 抜群の保水能力でも注目度大 独自技術で育む希少のり
  • 水前寺のり本舗 丹誠堂
  • 熊本市中央区坪井
  • 丹生慶次郎さん
  •  水にゆらゆらと浮かぶ水前寺のりを見つめながら、「“彼ら”が住みやすい場所・環境を作ってやりたいて思うとたいね」と、まるで子供に語りかけるように話す丹生さん。父親の代から50年以上に渡り希少な水前寺のりを栽培し続け、丹生さんが携わってから15年。年中通して、毎週約20kgを収穫するまでになった。
水前寺のり本舗 丹誠堂 丹生さん
水前寺のり

 専用の池に水温18.5度の地下水をポンプでくみ上げ、その水の栄養分のみで育まれる水前寺のり。清らかな水を蓄えるその池には、実は水前寺のりの他にもハエやアブラメといった小魚やサワガニ、カワニナなども生息する。「無農薬で育てようとすると虫も出てくるけど、それをハエやアブラメは食べてくれる。み~んなで共存して、一緒に住んでるんですよ」。独自に培った人工的な栽培方法ではあるが、優しい水の流れ方や水量、日照方法や時間など、どれもが“自然と同様”であることを目標に、緻密に計算しつくされたものばかりだ。
 実は最近、翠色がより美しい突然変異の新種を発見。それを“翠玉”(すいぎょく)と命名し、栽培量を増やし続けている。またその保水力に着目した化粧品も開発され、食品以外の可能性にも注目が集まっている。「まだ分からないことも沢山あるし、どこまで研究しても終わりはないです」。丹生さんの探究心に応えながら、今日も“彼ら”は清水の中で育ち続けている。